眠ノ記

寝言と黒歴史を丁寧に磨いてお出しします

君はケツの語源を知っているか?

このあいだ布団に寝そべって本を読みながら、ケツを叩いて米津玄師の『Lemon』のリズムを奏でていた時、ひとつの疑問が浮かびました。

なぜ「ケツ」と言うのだろう?

尻をケツとは読まないし、なんだか名称と柔らかいフォルムが一致しないように思われたのです。僕も日ごろから親しい人にはケツフェチと知らせている身ですから、この謎を探求しないわけにはいきません。

 

 

まずはネットに頼らず、自分なりに推測してみました。だだっ広いホームセンターでも、店員に目的の物がどこにあるかを聞かずに自力で探そうとする面倒くさいタイプなのです。

 

ーー人間はものを食べて生きている。口から始まって、その終わり、つまり結末がケツなのではないか?

 

我ながら、3秒で考えたにしては悪くないアイデアに思われました。僕はおもむろに立ち上がり、さっそく嫁に伝えに行きます。

 

嫁は台所に立ち、腰に片手を添えながら、コチュジャンとキャベツのもんじゃ焼きを焼いていました。僕がさっそく彼女にケツについての考察をぶつけると、

「あー、そうかもねー」

なんと興味のかけらもない返事!

僕は嫁のケツをぺちんと叩くと、すねたように踵を返しました。

 

 

布団にもぐりこみ、スマホを握り、意を決してググります。さあ答え合わせだ。

検索結果には、僕の仮説住宅を爆破解体するような衝撃の事実が書かれていました。しかも、ひらがなにすればわずか7文字という端的さで。

 

 

「穴」の音読み。

 

 

心に風穴が開くようでした。こんなに気持ちがすっきりしたのはいつぶりでしょうか。街中が選挙演説のもちゃもちゃした言説に包まれる中、僕は布団の暗がりの中でトランプ大統領級に思い切りの良い回答に出会ってしまったのです。

 

穴が本丸だと。ケツと思われていた柔らかな肉は、単なるガーディアンに過ぎないと。僕は発想の転換を迫られるとともに、自分の仮説がそこまで的外れでなかったことに胸をなでおろしました。

 

しかし、安心したのもつかの間、雪崩のような疑問が襲いかかってきたのです。

 

ケツだけ星人の存在。

ケツフェチなどと名乗ってきたことへのおぞましさ。

口も穴であり、ケツなのでは?というリアリズム。

 

僕は溢れ出る想像に耐えきれず、嫁を呼び出して、新事実を伝えました(音読みだってさ!)。嫁はさきほどと打って変わって感情を露わにし、僕とシンクロするように笑いながら布団の上を転げまわります(穴ですって!)。

 

しばらくしてふたりの波長が収まると、嫁はなにやら真顔になり、布団からこぼれ落ちた本の表紙を指差しました。

それはあまりにも出来過ぎた、あまりにもくだらない結末。

 

タイトルは、

トルーマン・カポーティ『冷血』

だけにね、だけに。