何がマナーかという線引きはとても難しい。
中でも、定期的に話題に上がるのが箸の持ち方だ。女優が食レポ番組に出たら残念な持ち方でがっかりしたとか、だいたいそんなとこ。
つい先月、こんな記事もあった。
僕は小さい時にわりとしっかり教えられたから、正しい持ち方をしているはず。だからといって、他人様の箸づかいを見て、直してほしいなんて思ったことはない。
種田(元中日、横浜)のバッティングフォームを見た時と同じで、「よくあれで普通に食えるなー」と驚くだけだ。
なので今回は、なんでそんなに他人の箸を気にする人が多いのかを考えてみた。
◎マナー違反だから説
箸のマナー違反は他にもたくさんある。寄せ箸、探り箸、ねぶり箸。割り箸を割ったあと右と左の箸をこすってシャリシャリシャリ。そもそも何を食べるか迷って空を漂わせただけでも「迷い箸」なんて違反になるわけで、持ち方だけをマナー違反と片付けるのは雑すぎる。
◎機能的に正しくないから説
「ああ、そんな風に持ったら手が疲れちゃうよ」という心配の気持ちから。思いついたから一応書いてみたけど、たぶんそういう意味の ”気になる” ではないはずだ。
◎迷惑だから説
意味不明。とくに音を立てているわけでもないし、嫌なら見なければいい。
◎育ちの悪さが見えてしまうから説
ネット上にあるいろんな意見を見る限り、これが一番の多数派。ただ、なぜ不快になるかの答えにはなっていないように思う。
そこで、もうちょっと突き詰めてみた。
箸の持ち方が一定層の人を刺激するのは、
「簡単なことなのになんでやらないの? 何回も習ったでしょ?」
という疑問からきているんじゃないだろうか。
箸関連でマナー違反とされるものの中でも、持ち方は探り箸や迷い箸といったものと比べて圧倒的に習う回数が多い。まさに基本中の基本だ。家庭によっては「信用を落とす行為ですよ」くらいに厳しく教えることもある。
だから正しく持てる人たちにとっては、そんな基本的なルールにすら従わず、間違いを直さない姿勢が怠慢に見える、という感覚があるのかもしれない。
ところが、正しく持てない人にとってはそれほど簡単なことではない。子供のころから何度も指摘されて、何度もできなかったからこそコンプレックスが膨らんで、どんどん意固地になってしまった。で、あれこれ理由をつけて気にしないふりをしている。
持ち方を指摘されてやたらと激昂する人を見ると、そんな風に感じる。
ということで、箸を正しく持てるものと持たざるもの、両者の温度差は見た目以上に大きい。なので家族以外は放っておいた方が無難だろう。ちなみに僕は友達や同僚にもよっぽどの理由がなければ指摘はしない(大事な商談があるとか)。僕に言われなくても、何度も言われてきただろうから。
……ただ、上に書いた全てをひっくり返すようなことを言うようだけど、嫁や子供が変な持ち方してたら「直そうか」って言うと思う。
ダサいから。
これはマナーや育ちの問題じゃなくて、単純にセンスの話。球場で種田を見たら個性派!って思えるけど、嫁がバッティングセンターで種田の構えを取ったら「いや恥ずいから普通でいい!」ってなるでしょ。