先日、ちょっとした取材のため、川崎競馬場に行きました。競馬はゲームをやったことがあるので基礎的な用語は知っていますが、レースを生で見るのは10年ぶりくらいです。川崎は初。
川崎駅から行ったのでだいぶ歩きました。平日にスーツ族を避けて競馬場に行くというのもなかなかの罪悪感です。
雨空はキタノブルー(そんな名前の馬いるかな)。
なんとか到着。簡単な手荷物検査を受けて中に入ります。‥‥と思ったけど入り方がわからない。
おたおたしてたら、
「その改札に100円入れるんですよ」
とスタッフの方に教えてもらいました。そんなシステムなのかー。馬が走る姿見られるだけでも元取れますね。
いやー、競馬場広い。せっかくなので柵ギリギリまで寄ってコースを眺めてみました。すぐ隣にスーパーマーケットがあるくらい街に溶け込んだ立地なのに、なんて開放感。
思わず風の匂いをすーっと吸い込むと、すぐそばにいたおじさん達が、
「こらハト。芝に入ったらあかんがな。うわっ、馬のウンコ食べた。うわわっ、とおもたら自分でウンコしよった!食物連鎖や!」
とキャッキャしていました。
気を取り直してパドックへ。出た!馬だ!
でかい、しなやか、美しい。否応無しにテンションが上がります。
近くで競馬新聞を購入し、コースの状態だ右回りだ騎手だとあれこれ考えを巡らせることに。とにかく予想の指標が多いのが競馬の難しさであり、魅力ですよね。
で、しばらくして予想がほぼ固まったころ、それらをすべてひっくり返す出来事が。
↑の画像の子(ベリッシマちゃん4歳)がこっちをガン見してきたのです!
馬ってこんな風に眼球全黒のイメージがあったんですが、
しっかり流し目もできるんですね。軽い驚きとともにすっかり愛着が湧いてしまい、予想を撤回してベリッシマちゃんに突っ込むことにしました。
が、結果は惨敗。
「私、今日はダメよ」のサインだったみたいです。
仕方ない、なんとか取り返そうと競馬新聞を広げる僕。
すると、また事件が起こりました。
※イメージです
「にいちゃん、◯レースはマンシュウ(万馬券)だったかい?」
知らないおじさんが話しかけてきたのです。ものすごく自然。RPGで町の人に話しかけるくらい自然。
左手にはビール、右手に新聞とペン。服は上下ともグレーとベージュのあいだみたいな蛭子能収カラー。典型的なギャンブラーの風体でした。口角にはたっぷり謎の泡がついています。
僕はおじさんのいうレースを見ていなかったので「今来たところで、」と答えようとすると、おじさんはニヤリと不敵な笑みを浮かべて
「おいおい、取って食うわけじゃないんだから慌てんじゃねえよ」
と言ってきました。映画やドラマで見た密売人以外からは聞いたことのない台詞です。あやしい、あやしすぎる。飲んだら馬券が当たる薬でも買わされるんじゃないだろうか。
おじさんは僕を仲間だと認めたのか、聞いてもいないのに自分なりのギャンブル論を説き始めました。
他人は他人。もちろん周りの意見は参考にするが、実際に賭けるときはいかに自分なりのオリジナリティを入れられるかだーー。
テリー伊藤のテレビ論みたいなことを長々と語り続けます。
10分、20分……とにかく長い。話は同じところをお馬さんのようにぐるぐる回り、僕は自分の予想が全くできなくなってしまいました。こっそりその場を離れようとすると、軽く手を掴まれる恐怖。
よくよく聞けば、いろんなところで出入り禁止になっているそう。そりゃそうだ。
逃げよう。
僕は決意を強く固めると、おじさんが馬券購入用のマークシートに記入している隙に一目散にダッシュ!
それからというもの、馬券を買うときもレースを見るときもトイレに行くときも、常におじさんの姿を確認しながら行動するハメになりました。
的中した瞬間、甲本ヒロトくらい跳ねるお姉さんを見やり、
名物のもつ煮丼はリキが入らないときの悟空くらいのスピードで胃に流し込み、
怪我した騎手の復帰を願う短冊に束の間、心を洗われ、
みやげ屋の中、予想屋の横、
そんなとこにいるはずもないのに――。
こうして、僕の川崎競馬場デビューは逃げるように幕を閉じました。
スタッフさんの感じはものすごくよかったですし、そろそろ出禁のおじさんは処分を受けてると思いますので、みなさんも安心して足を運んでみてください。
肝心の結果ですが、置きにいった予想を1点だけ当てました。
7月、7レース、7番。
レース名もなんだかかわいいし、よかったです。
ただ、確かに速かったけど、さすがにインヴィジブル( ”目に見えない” の意)はかましすぎたかも。3着だったし。通算68戦0勝(!)だし。
インヴィジブル | 競走馬データ - netkeiba.com
馬の名前っておもしろいですよね。
いつか面白い子の一口馬主になってみようかなあ。