眠ノ記

ーネムノキー

下戸とバーテンダーの日々

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僕は働くのが嫌いなくせに、いや嫌いだからか、いろんな仕事をやったことがありまして。その中の一つにバーテンダーがあります。なんだかんだ1年はやったのかな。特に男性だと、ちょっと興味をもっている人も多いんじゃないでしょうか。モテるかなあとか。あるいは、モテるかなあとか。

 

思えばこれほどノリで始めた仕事もなかったです。
もともとは普通によく行く店でした。
オープンテラスの席があって、ビリヤードとダーツとピンボールがあって。お酒は1杯くらいしか飲めなくても、遊び場感覚で行けたんですよね。

そんなある日、僕は張り紙を指さして
「働かせてくれませんか?」
と言ってみました。

 

それを聞いたバーコードハゲの中年店員は不敵な笑みを浮かべ、
「いいですよ」
とまだ客である僕をバックヤードに呼びつけたのです。

その流れのまま契約内容や仕事の説明まで完遂。
スムーズすぎてマルチの誘いかと思いました。すごかったのは、ほんの数分しゃべっただけで、さっきまで客だった僕のことをいつの間にか「お前」と呼んでいたこと。ブラック企業って変なスキル高いですよね。いや、雰囲気のいい店なのにどんどん若手が辞めてたので、おかしいと思ってたんですよ。

最後には、
「時給は850円ね」
と言われました。

金より経験メインで働きたかったからいいんだけど、深夜3時くらいまで普通に働くシフトで850て!もう逆に面白い。2019年現在では論外として、当時でもヤバイ金額だったんじゃないかなあ。


…あとハゲは店長ではなく、たまたまいたペーペーの社員でした。誰でも入れろって言われてたみたい。本物の店長は僕のわずか2つ上だったのですが、郷ひろみとヒロミのあいだをとったみたいな大人びた男性でした。妙に目が座っていて怖い。
こうして晴れて就業した僕ですが、当然というべきか、次々に難敵が現れます。

 

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「バイトなかま」があらわれた!

飲食の深夜バイトですから、まずは定番の大卒いびりですよね。みなさんも2回や3回は経験があるのでは?あるあるでしょ?あれ、八王子だけ‥‥?

接客系の店員同士は仲が良かったんですが、ひどかったのはキッチンです。更衣室では私服を引っ張られ、さすがにいい服着てんなあ、と言われたり。常連客にいつも出している裏メニューを、メニューにないからと気分次第で断られたり。まーいろいろありましたね。

そんな風に裏で色々あってすそがビヨーンとなりながらも、涼しい顔をするというのがバーテンダーとしての最初の務めでした。

※その後、趣味で通っていたボクシングジムでキッチンのリーダーとばったり。運よく一目置かれるようになり、変なちょっかいはなくなりました。なんでもかじっとくもんだね。

 

 

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「ヤクザ」があらわれた!

水商売ですから、そりゃあ怪しい人がきます。
ごっつい男性とほっそほその女性がタブレットとペンみたいな顔して歩いてきたら、ヤベーなと思いつつ店長にバトンタッチしなければいけません。

だいたいが身なりで見当がつくのですが、ただ、1回危なかった時がありました。
わりとこじゃれた服装のカップル客と、僕と、ホールの女の子を交えて4人で喋ってた時のことです。

客女「〇〇ちゃん(ホールの女の子)、彼氏いないの?ネムヒコ君なんてどう?」
〇〇「ダメですよー、ネムヒコさん彼女いるんですから。店にも連れてきたことあるし」
客女「いいじゃなーい。ずっと一緒にいられるんだから」
ネム「いやあ、僕に〇〇ちゃんはもったいないですよ」

みたいな、バー特有の仮面をかぶったようなやりとりのあとのことです。僕がトイレに行こうとしたら、客男が後ろをついてきました。そして、角を曲がったところで

客男「〇〇に手出すんじゃねえぞ」
と強烈な壁ドン✋。

あとから店長に聞いたところ、その人もヤバい筋の人だったらしいです。闇金だかポン引きだか人身売買のブローカーなんだかしりませんが、こういうサイレントヤクザはやめてほしいものです。素直に縦じまのスーツに龍虎のシャツを着てください。

 

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「さけ」があらわれた!

いや、シンプルに酒が不味い!下戸なんですもの。

ですので、基本的なスピリッツ&リキュールの味をできるだけ早く覚えて、味見の数を極力少なくて済むようにしました。ある程度抑えてしまえば、これとラムが合わないわけないな、とか分かってくるので。

それでも最初のうちはフラフラで自転車に乗って帰ってましたね。ダメなんだけど。「邪魔だボケ!」とヤクザに後輪を蹴られたりしたこともあるので、もう制裁は受けたものとして勘弁してつかあさい。

酒につきまとう敵は味だけじゃありません。
あの憧れのシャカシャカ。シェイカーね。あいつが意外な伏兵でした。

そりゃあ、最初の5回くらいはテンションも上がります。氷を入れ、リキュールを逆手で注いで、いざシャカシャカシャカシャカ!!!もうFUJIWARA原西さんくらいの勢いで振ってやりましたよ。
ただ、6回目以降ははただひとつの感想しかありません。

❄冷てえ❄

あれ、もうちょっと魔法瓶みたいなつくりにできないもんでしょうか。手に冷たさが伝わりすぎて、振る系のカクテルをつくる気が失せてしまうのです。たまーに子供連れがきて、高いスツールにちょこんと座って眺められたりすると萌えましたけどね。よーし、お兄さんオレンジジュースが泡だらけになるくらい混ぜちゃう。

 

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「ババア」があらわれた!

居酒屋ならおっさんが厄介だと思いますが、バーは名前通りババアがヤバいですね。

いえいえ、もちろん熟女は大歓迎ですよ。
「お年を召し」+「女を残しつつ」+「自分が上だと思っている」
あくまで、3つのフレーバーがフィーバーしてこそバリバリのバーのババアなのです。 

コウメ大夫みたいな化粧の「いくつに見える?」はエクストリーム難度だし。

「お兄さん、私が付き合ってあげてもいいわよ?」は愛想笑いで顔面がつるし。

「私をイメージしたカクテルをつくって!」は殺意が邪魔して創作意欲がわきません。


面倒だから、僕は毎回”しそ”のリキュール+トニックのシソトニックでお茶を濁してました(本当は梅干しとお茶を混ぜて出したい)。渋好みの年代にも合わせつつ、爽やかさとダジャレ要素もあるという最強カクテル。ネーミングを発表すると、\ワーハハハ!/とドリフみたいな歓声が上がるんです。

ちなみにロリにはフルーツ系+ヨーグルト、 ギャルにはマリブとか、グラスホッパー(チョコミント味)みたいなクリーム系が鉄板。バニラは結構クセがあって素人には使いこなせませんでした。
鯖江は好きでよく飲んでたけど。
鯖江参照→男なのに車道側を歩かなくて説教を食らった話 - 眠ノ記

 

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ネムヒコはひまだ。だが、にげられない!

意外や意外、最大の敵は「暇」でした。
わりとご飯も食べられる店というか。テーブルでも数十席あったから、すすんでカウンターに座ろうとする人は少なかったんです。
それに、せっかく誰かが席についても、

〇グループ客は会話するくらいなら飲ませるかダーツさせろ。盛り上がってきたら「罰ゲームどうですか」と対決を煽ってスピリタス(すごく強い酒)を出せ。

〇一人で来る常連はビリヤードに誘って遊びながら飲ませろ。

〇めんどくさい酒は原価がかさむから、全部ジントニックかモスコミュールに誘導しろ。

みたいに言われていて…バーテンダーらしいゆったりした接客も何もありませんでしたね。来る日も来る日もグラスを磨いていたような気がします。


テーブルにすら人がいないときは、入口の近くで客引きをしてました。
といっても、ほぼ誰にも話しかけずニコニコしてるだけなんですけど。夏場に店のほうから漏れてくる音楽(アーバンソウル?ビヨンセみたいなやつ)を聞きながら、適当に街を眺めるのはなんだかんだ好きでしたね。あの日々のおかげで、パリピが聞くような音楽もけっこう聴けるようになりました。